チョンチョンと
「どれも、もういらないのよ。 買取もできるの?」と尼崎市のH様が数個のリングを持ってこられました。
びっくり その中の一個は全く新品です。 全然着けた様子がありません。
真新しいダイヤスリーストーンリングです。
リング枠は数回でも着ければ、どこか地金に小傷がつきます。
プロが見れば、着けている指輪かそうでないかは、見分けが付きます。
余談になりますが、加工職人さんは、修理に回って来たリングのキズを見て、その人の着け方や趣味まで当てることがあります。
リング枠の腹の部分に、小さな窪み状のキズが沢山ある修理品を見て「この人は、カラオケが好きやろう」と言っていました。
ドンピシャで、よく拍手する人は、こんなキズができるようです。
また、重ね着けの習慣がある人のリングは、片側にキズが集中してつきます。
新品商品を不思議に思い「これ着けないんですか?」と聞くと、
どうやら、どこかの展示会で、あまり気に入っていないのに無理に買わされた様で、「見るのもシャクで、全然着ける気にならない」とのこと。
こんな深い痛手を負った方は、本当に多いですね。
高い商品を、逃げられないように囲い込んで、押し売りされては、悔しさと不信感しか残りませんよね。
本来お買い物って楽しいハズなのに・・・そんな商品、早く消してしまいたい気持ちも分かりますよ。
豪華な食事やお土産もいらない、自由に好きなだけ見せてくれて、気にいった物があったときだけ、お客さんの立場で接客してくれる。
そんな展示会って無いもんですかね・・
「ダイヤは綺麗ですので、もったいないですね」と言うと、
自分の指に着けていた甲丸リングを外して、「これにチョンチョンと、このダイヤだけ入れられる?」とのこと。
「チョンチョンとですか・・甲丸リングの巾よりダイヤの方が大きいので・・チョンチョンとは、そう簡単にはできないんですよ」との言葉を飲み込んだ。
業界の汚名をそそぐために、日本の宝石業界の将来のために(大げさな)
何とか、満足していただけるダイヤの指輪にリフォームしてみよう、と男たちは立ち上がった。 かな?
H様のご希望を実現するため、これら全部をお預かりして帰る。
いつものデザイナーと、この、気の毒な事情を話して打ち合わせ。
「残念なことに、こんな売り方をする業者が多いのですよね。」 「お客様は、みんなどこかで痛い目に会っていて手負いになっているから、まともな商売人まで敬遠されてしまう」
デザイナーさんも大いに憤慨する。
細い指のH様に合わせて、緩やかなV型にダイヤを3個載せたリングをデザインする。
また見積も、ダイヤリング以外の不要地金を加工代に充当すれば、お値打ちに出来そう。
後日、見積とデザインをご覧頂きOKを頂く「楽しみにしているわ」とのこと。
一ヵ月後、オリジナルデザインの手作り作品完成。
見るのもイヤだったリングが、お気に入りのオンリーワンジュエリーに大変身。
納品に伺うと、指につけてじっくり眺め、すごく気に入ってもらえました。
お客様の心の傷が少し軽くなるようなお手伝いが出来たようで、こちらも嬉しくなりました。
この作品は、ダイヤ3石はもちろんのこと、お預りの甲丸リング枠と元のダイヤリング枠を溶かして再利用して、新しいダイヤリング枠を手作りしていますので、加工賃だけで完成です。
その上、他の不要な枠地金がありましたので、その分を加工代に充当でき、リーズナブルな価格で完成しました。
差引した代金を頂き、お釣りを返そうとすると、「いいの、いいの。お世話になったから、少しだけだけど取っといて・・」と絶対お受取りになりません。
本当に心から喜んで頂いている事が伝わってきました。
こちらこそ、ありがとうございました。
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