玉突きリフォーム
指輪のエメラルドを取換え加工
尼崎市のY様から、
「何十年も前に、主人にエメラルドのリングを買ってもらったのだけれど、キズが気になって着けられないから、何とかならないかしら」と相談を受けました。
見せてもらうと、センターに1.73カラットのエメラルドが入り、周りにメレダイヤを放射状に配した、立派なリングでした。
しかし、エメラルドに、指輪にしては少し気になるキズ(内包物)があります。
元来、エメラルドはキズ(内包物)が多くて目立つ宝石です。
以前は、キズがあるから本物、と言われた時代もあったくらいです。
近年は、お客様が買われた当時に比べて、円が強くなった分、キズの少ない高級品がお値ごろで手に入るようになりましたが、以前は高くてもキズの多い石が多かったようです。
お客様の希望は、亡きご主人様に買ってもらった記念の品だから、何とかセンターストーンのエメラルドの中石だけを取り替えることは出来ないだろうか、とのことでした。
中石を生かして、新しい形に枠をリフォームする例は多いのですが、枠を残して中石だけをそっくり取り替えるリフォームは、あまりありません。
というのは、エメラルドカットの色石などは、同じサイズの石を探すことは、殆んど不可能だからです。
石の縦横深さのサイズが合わなければ、周りにビッシリダイヤを埋め込んだ枠に入れることは出来ません。
そこで、お客様のご希望を実現する二つの方法を考えました。
一つは、大きさの似たキズのないエメラルドを用意して、その石に合わせて、そっくり同じ形のリングをオーダーメードする方法です。
もう一つは、同じサイズの石が入手できる可能性は低いので、今付いているものより若干大きいサイズの石を探して、枠に合うようにエメラルドをリカットしてセットする方法です。
どちらの方法にも一長一短ありますが、オーダーメードする方がより現実的では、と思われました。
オーダーメードなら、縦横のサイズをいわなければ、似通ったカラット数の石を探すことは出来ますし、元のリングの地金や脇石も、そのまま再利用して作り直すことが出来ます。
しかし、新しい中石のサイズに合わせて枠を作るので、元の形に近いとはいえ、微妙に変わることは避けられません。
そして、中石代のほかに、手作り加工代が掛かります。
もう一つの、中石だけ取り替える方法は、元の形をそのまま残すことは出来る反面、高価な石をわざわざカットして、枠に合うよう小さくしなければならないジレンマがあります。
現実的には、ロスのないような、元の石よりわずかに縦横のサイズが大きい石など見つかるだろうか、ということです。
とりあえず、エメラルドのルースを探すことから始めました。
しかし、サイズの近いルースは少なく、あっても、非常に高いことをいいます。
一般的に、色石のルースは、こちらから迎えに行く(欲しいという)と高くなる性質を持っています。
ルースを探すより、同じような大きさのエメラルドリングの製品が割安であるから、それに買い換えてもらうよう勧めた方がいい、と言ってくれる業者もありました。
同じ形で残したい、というお客様の希望を叶えてあげたいと思いながらも、ルースでは高くなりすぎるから、これはちょっと無理かも、と思い始めていました。
この状況を、お客様には正直にお話ししました。
つまり、ルースを手当てすると、ロスの出ないような同じようなサイズはなかなか見つからないし、見つけたとしても、思ったより割高になります。
形は違うけど、同じような大きさのエメラルドが載ったリングなら、割安に入手出来ますが、どうしましょうと聞くと
「どうしてもあの形を残したい、ダメならそのままで置いておくわ」といわれました。
それは当たり前ですよね。
ご主人との思い出の形を残したまま中石を取り替えたいのに、元の形が変わってしまっては、何の意味もありませんから。
そこで、もう一度奮起して方々の業者に当たって見ました。
そのうちの一軒が、
「それに近いルースが一個だけありますよ、よければ安くしておきますが」
と連絡があり、早速見せてもらいました。
お客様の気持ちが通じたのか、奇跡が起きました。
お客様のエメラルドが1.73カラットで、発見したルースが1.75カラット。
縦のサイズは殆んど同じで、横巾がほんのわずかに大きいだけでした。
しかも、綺麗で割安です。
こんなにピッタリの石が見つかるなんて、本当に信じられないほどです。
早速、お客様の了解を得て、その石の横巾だけ少しリカットして枠にセットしました。
完成して納品すると「思い出の品が、綺麗になって戻ってきた」と大変喜んでいらっしゃいました
残った元のエメラルドは、角ダイヤを二個入れて、ペンダントに加工しました。
リングでは気になる傷でも、ペンダントなら大丈夫。
リングに新しい石を入れ、元のリングの石をペンダントに、玉突き式にリフォームして納品しました
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